全国各地の楽器店で“中古ピアノ”が広く販売されている事実は、みなさんも良くご存知だと思います。
新品のピアノは決して安価ではなく、特にこれから成長されるお子さまのピアノとなりますと「なるべくローコストに抑えたい」と思いますよね。でも、上達や音・弾き心地を考えると、わが子にアコースティックピアノ(生ピアノ)を与えてあげたい。
また国産ピアノにいたっては、木材をはじめとする材料コストの高騰と、市場で需要と供給のバランスが崩れていることもあり、現在では「新品ピアノだから良い」とは必ずしも言えないのが事実。10年前、20年前のピアノのほうが良い音を奏で、弾きやすく、しっくり来る場合もあります。
そこで、中古ピアノの出番となる訳です。
現在では、その流通量は新品ピアノの出荷量を凌ぐともいわれる“中古ピアノ”。これから何回かに分けて、中古ピアノについてお伝えしていきたいと思います。
まず、販売価格について。
新品ピアノにはメーカーや輸入元が規定する「希望小売価格」、つまり定価が購入価格の目安となる訳ですが、中古ピアノには定価が存在しません。
中古ピアノであっても、もちろん元は新品ピアノであったわけで、もともと販売されていた定価はありますが、販売店は中古ピアノに関しては定価表示をする義務はありません。製造後の物価変動や年数経過により、購入価格の目安とはなり得ないからです。
ですので、中古ピアノの販売価格は、販売店が独自に設定する場合がほとんどで、同じ機種のピアノであっても販売店の設定基準によってかなりのバラツキがあるのが事実です。
「じゃあ、安い店を探すのがいい?」というふうになってしまいますが、これはあまり良くありません。中古ピアノは、販売店のモラルによってコンディションが全く異なり、音色や弾き心地、寿命が異なってくるからです。
中古ピアノを再販し、安心して使い続けていただくには、然るべき修理や調整が必要です。修理や調整には、もちろん相応の技術とコストが必要です。それを販売店が責任を持って施し、企業努力によってコストパフォーマンスを追求しているかどうか、が問題なのです。
修理や調整の度合いも販売店によってバラツキがあり、それを消費者が見極めるのは至難の業です。
(修理・調整に関することは、後日改めてお伝えしたいと思います)
ただ、価格破壊を前面に打ち出す販売店、特にインターネット販売や催事販売を主体とした販売店には、われわれ同業者からしても実情には恥ずかしくて目を覆いたくなるようなところが数多くあります。
どの業種にも当てはまることですが、度を越えた安売り店の商品は、「安物買い」のなんとやら、になり兼ねないですよね。
ピアノと人のお付き合いは、とても長いものです。中古ピアノであっても、一生に一台の買い物になるかも知れない、大切なピアノ。
ですから、良い中古ピアノを選ぶには、まず信用のおける販売店を見極めること、つまり“良いお店選び”が必要なんです。
店構えや雰囲気、店員の態度、接客の応対、商品の状態・・・どれも実際に店に行かないと判断できないですが、店に行けばいろいろ見えてきます。
インターネットやチラシ等で価格情報をご研究なさった後は、ぜひお店に行ってみてください。