富士の峰も雪化粧をし、ようやく冬らしくなってまいりました。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
さて今回は、輸入ピアノについての正しい知識をお伝えしようと思います。
と申しますのも、ある特定のメーカーを扱う特約店様より、お客様方へ誤った情報をお伝えになっている節があるからです。
悲しい事ですが、楽器業界では特定のメーカーが特約店制度を敷いて拡販してきた歴史があることから、他メーカーや輸入メーカーのピアノに対する反対広告が公然と行われ、販売窓口の多いメーカー、宣伝量の多いメーカーが常に正当化されてきました。
私は、業界のこういう良くない慣習は断固反対です。どのメーカーのどのピアノにも、長所と短所はあります。お客様へ正しい情報を公平に、正確にお伝えする。提供者の立場としては当然ではないでしょうか。
輸入ピアノについては、これまで国産ピアノと比較してマイナーであったため、認識されていないことが多いようです。
輸入ピアノの原産国はさまざまですが、ここでは廉価販売されているアジア製、アメリカ製のピアノを除き、ヨーロッパ製のピアノについて述べたいと思います。
Q.1
輸入ピアノは日本の気候風土にはなじまない?
A.1
いいえ、そんなことはありません。木材の使用比率が国産と比較して多いため、温度差や湿度差による影響は受けますが、それは程度の違いはあれど国産ピアノも同じ。どちらも、定期調律等の適正なメンテナンスを受けることにより解消されます。
Q.2
輸入ピアノは長距離搬送されるため、コンディションが悪い?
A.2
いいえ、違います。ヨーロッパの正規ブランドのピアノのほとんどは、船便(コンテナ)を使って日本に届きます。輸出用のピアノは、気候の影響を受けないように厳重な梱包がされており、コンテナから下ろされた後に開梱されます。また、メーカーの出荷時の調整、また日本輸入元での調整と、販売店による調整、つまり三重の調整が施されており、コンディションを最大限に上げた状態のピアノが届けられます。
ただ、正規販売窓口でお求めでない場合は、荷ずれ品やB級品などが届けられるケースや、調整が不完全なものが届けられるケース、また適正なメンテナンスが受けられないケースがあるようですので、販売窓口をお選びになる際には注意が必要です。
Q.3
国産ピアノは、国内で生産されている?
A.3
アップライトピアノに関しては、大手国産メーカーのピアノであっても現在はそのほとんどが海外工場(インドネシア、中国等)と国内工場による分担生産であり、そもそも純然たる国内生産のピアノは、ごく一部の上位機種のみです。
ピアノのボディを海外工場で生産し国内工場に搬送した後、張弦(弦を張る作業)やアクション(鍵盤の動きを弦に伝えるしくみ)の組み立てや組み付け、または最終調整などの肝心な作業を国内工場で行うことによって、国産メーカーは材料コスト、製造コストの削減を図っています。
また、部材についても海外調達の比率が高く、「国産ピアノ=国内メーカーが監修し、アジア内で製造するピアノ」という認識が正しいようです。
これは電化製品や繊維など、さまざまな商品に当てはまることですね。
Q.4
輸入ピアノは、メンテナンス費用が高額?
A.4
販売店にもよりますが、一般的にはさほど変わりません。但し、部品交換が発生した場合に国産ピアノと比較して時間を要するものがあります。
Q.5
輸入ピアノは、手作業による工程が多いためトラブルが多い?
A.5
いいえ、そんなことはありません。特に木材部品の場合、いくら精巧な機械を使用して均一の寸法に仕上げたとしても、微妙に寸法が変化します。ライン生産の国産ピアノはそのまま使用する程度の変化でも、手作業の輸入ピアノは職人が微妙な寸法変化に対応しながら、自然乾燥を経て、時間をかけて組み付けられます。弦の張力を支える鉄骨フレームでさえ、数ヶ月に渡り自然乾燥され、寸法安定を図っています。
ですので、寸法変化の少ない、耐久性の高いピアノができる訳ですね。
Q.6
輸入ピアノは高い?
A.6
残念ながら、安くは無いです。部材コストや製造コストがかかっているからです。
ただ、国産の上級モデルと比較しますと、購入できるピアノは多くあります。ですので、決して「高嶺の花」ではないと思います。
最後に。
決して国産ピアノを否定するのではなく、一部の偏った情報提供による輸入ピアノのハンディを取り除く目的でご紹介しております。悪しからずご了承下さい。